囲い込み
今回は前回の内容を引き継ぎ、業界の悪習慣「囲い込み」について触れておきたいと思います。
以前に最大手の不動産業者が週刊誌にスクープされて以来、一般にもその実態が知れ渡ることとなりましたのでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
業界の悪評についてですから少し話しにくいことではあるのですが、残念ながらそういったことをできてしまう不誠実な営業担当は中々いなくなりません。
一生に関わる可能性がある不動産のお取引において、そういった営業担当をパートナーにしてしまうことはリスクに繋がると思いますので、警鐘を鳴らしておきたいと思います。
我々のような不動産の「仲介」を生業とする業者は、不動産を「売りたい方」と「買いたい方」を「仲介」し、取引が成立すれば「仲介手数料」を頂戴しています。
「売りたい方」の仲介を担当する業者を「元付(もとづけ)」と呼び、物件がなるべく好条件で売れるように売主様側のエージェントとして売却活動を行います。
「買いたい方」の仲介を担当する業者は「客付(きゃくづけ)」と呼び、満足して頂けるマイホームを見つけられるよう買主様側のエージェントとして活動を行います。
無事に売買取引が成立した場合、元付業者は売主様から、客付業者は買主様から、それぞれ仲介手数料を受け取ります。
これが最も基本的な取引形態です。
売主様→元付業者 ⇔ 客付業者←買主様
しかし、もしも元付業者が買主様を見つけてきた場合「元付=客付」という状況になります。
この場合、仲介手数料は売主様・買主様それぞれから受領しますので、単純に報酬は倍額となります。
このような取引を業界では「両手」と呼び、対していずれか一方からのみ手数料を頂戴する取引は「片手」と呼びます。
この両手取引が偶然に起こるのであれば問題はありません。
しかし、不動産業者の中には両手取引を目的として、売却物件の情報を公開せずに隠したり、公開はしても他社のお客様に対しては「既に申込みが入った」「近日中に契約予定」などと言って検討させてくれないケースがあるのです。
このように、両手取引を目指して意図的に物件情報を操作する行為を「囲い込み」と言います。
中には他社から条件の良い申込みが入っても、自社で取った数百万円の価格交渉付き申込みを優先するような業者すらあります。
前回のメール文末で「A社では紹介されなかった物件が、B社から紹介してもらえた」ということが、必ずしも朗報ではないといったニュアンスのことを書かせて頂いたのはこのためです。
良い物件情報を得られたことは良いことです。
しかし、その情報がもしも「囲い込み」によるものであった場合、その業者は「時と場合によってはお客様の利益よりも自分たちの利益を優先する」可能性があります。
繰り返しにはなりますが不動産業者を選ぶ際には「パートナーを選ぶ」という視点も持って頂けますと幸いです。
最近では「囲い込み」に対する公的機関の監視の目も強くなってきていますし、減ってきてはいます。
しかし、すぐに複数の申込みが集まりそうな条件の良い物件であれば、短時間で決着できれば発覚しにくい為、未だに根絶には至っていません。
複数の不動産業者とやり取りをする中で、些細なことでも違和感を感じるやり取りがありましたら、よろしければご相談くださいませ。